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人獣共通感染症予防の重要性 

2019・7・18 

パシフィコ横浜で開催された人獣共通感染症予防のセミナーに参加してきました。

講師は、むらた動物病院の村田佳輝先生(東京農工大学 国際家畜感染症防疫研究教育センター 北里大学 北里生命科学研究所 感染症学 獣医臨床感染症研究会 VICA)

でした。

 

犬レプトスピラ症」、犬を飼っている方はご存じの方も多いと思いますが、狂犬病やフィラリア症に比べてピンとこない方も多いのではないでしょうか?

 

人と動物の共通感染症のひとつ犬レプトスピラ感染症とは、

 

 ネズミなどの野生哺乳動物の腎臓に保菌され、尿とともに排出される。ヒトや犬

 などは、レプトスピラを含む尿との接触、あるいは尿に汚染された水や土壌との

 接触により偶発的に感染し発症する。イヌの感染初期症状としては、発熱、倦怠感、

 食欲不振、嘔吐、脱水、出血がみられ、その後、腎不全、肝不全に発展し治療が

 遅れれば死に至る疾患である。

(NID国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2345-iasr/related-articles/related-articles-436/6527-436r06.htmlより)

 もちろんワクチンは開発されています。ただ、レプトスピラ症のワクチンが含まれているのは7種混合ワクチンからです。レプトスピラと言っても血清型が何種類もあり、現在日本では5種類ほどの血清型のワクチンがあるそうです。(単独のワクチンと7種混合から11種混合ワクチンに入っているものとあります)

仕事上、カウンセリング時にワクチンの証明書を見せて頂いておりますが、きちんと接種されている方でも6種混合ワクチンまでの方が多いのは、横浜市という生活環境上、感染のリスクが低く副作用などのことも考えると接種の必要性は高くないという考えからなんだと思います。

 

 でも、実際はどうなんでしょうか?

犬だけのお話ではありません。レプトスピラ症は共通感染症です。

1960年位まで、日本では年間300人ほどの人が亡くなる非常に重大な感染症でした。

秋疫(あきやみ)、用水病、七日熱(なぬかやみ)、ワイル病などの名前で呼ばれていたレプトスピラ症の感染経路を簡単に表すと

 

感染動物の腎臓内のレプトスピラ→【尿と一緒に排泄→【河川、湿地、沼、湖などの地表水中に生存→【動物や人が汚染水に触れることで経皮的、経口的に感染する

 

となります。

人においては感染者の職種に、感染源と考えられるネズミの尿に接触する可能性の高い、生鮮食料品、調理関係者、解体業、土木工事、下水道工事、電気工事関係者が多いことも確認されています。

感染例を調べてみたところ、川遊びを楽しんでいたグループの集団感染というものがありました。

綺麗に見える水にそんな菌が存在しているなんて思わないですよね。

レンコン農家で飼われている犬からもレプトスピラ症が確認されています。(風評被害でご迷惑をおかけしないため県名は載せません)

九州や沖縄だけの感染症ではないということです。

長雨や台風の影響で汚染された土壌から河川に流れこむと感染のリスクも高まるようなので、大雨、洪水、台風などの後はさらに気をつけなければなりません。

 

セミナーの中で村田先生が「実際には日本全国に広く蔓延していると考えられ、また実際発症した場合には、治療・検査費が高額となり、かつ死亡率の高い

人獣感染症である。そのため予防が本感染症対策として重要であり、多くの犬へのワクチン接種が望まれる。また、L・Canicolaは、犬において自然治癒した場合は、保菌者となり長期排菌をし、犬ー犬感染が成立し、犬だけではなく人への感染の危険もある。また、原因不明の重症腎不全が見られた場合は、その陰にレプトスピラが潜んでいる場合があるので注意が必要である。以上のように複雑な感染経路・症状を伴うので、室内犬でも日常からの予防接種を心がけることが必要である。広い認識のもとに、今後わが国でのレプトスピラ症ワクチンの普及することを期待し、全頭接種を喚起していきたい。」とおっしゃっていました。

 

【レプトスピラ症】と検索すると沢山の文献や画像が出てきます。怖い感染症だけれど九州や沖縄地方に多いとか、動物に関わる仕事をしていながらどこか漠然としていて身近に潜む危険としては捉えていませんでしたが、上記にもある自然治癒した犬から犬への感染のお話はとても身近な危険でありとても恐怖だと感じました。例えば、水辺でなくても、ネズミが出現するような繁華街や家屋でも、その感染した尿に触れる機会はあります。それをなめてしまったり、肉球にある細かい傷から体内に入り感染し、軽い感冒症状で自然治癒してまい、飼い主も獣医師も気づかないパターンです。何も知らない訳ですから、元気になれば普通にお散歩にいきますよね。そして保菌者となった犬があちこちにおしっこ(排菌)をしてしまい、その尿により、他の犬への犬ー犬感染が成立してしまうということです。

そして現状、レプトスピラ症に感染していたとしても、すぐに「レプトスピラ症ですね」と診断がつくわけではなく、血液検査は検査機関へ出し、時間もかかり、検査費も2万円近くかかるそうで、検査をしない獣医師、飼い主が多いのも事実。これが先生のおっしゃる実際には日本全国に蔓延していると考えられるという点でもあります。実際にレプトスピラ症に危機感を感じ、関心を寄せている獣医師がいる地域に発症症例数が多いのがそれを物語っていて、検査に出していないから確定診断がつかないだけで、数字として出てはいないレプトスピラ症感染が私たちの身の回りにも潜んでいるのかもしれません。

 

専門的な用語を含むような難しい内容や血清型などについては、このブログではふれていません。少しでも興味や危機感を感じてくださったかたは是非、「レプトスピラ症」を検索してみてください。

 

ペットシッター目線で、飼い主様にお伝えしたいことは、

 ※飼われているワンちゃんが、上記に書かれた初期症状に当てはまるような場合や、黄疸、強結膜充血、粘膜充血、軽度の腎・肝障害などがある場合、

  レプトスピラ症の検査を受けてみてください。早めにしっかり治療できれば、重症化や死亡する最悪な事態を防げる可能性も高くなります。

 ※ご旅行などで湿地・水辺・川遊びなどにお出かけする機会のあるときは、必ず事前に予防接種を受けてください(血清型は行く地域により獣医師と相談)

 ※ネズミがいそうな繁華街付近にお住まいでお散歩をされる方は予防接種をお勧めいたします(拾い食いや溜まった汚水を飲んでしまったりする癖のある

  子は特に)

追記:レプトスピラ症ワクチンのアレルギーが心配な方へ

 MSD社のワクチンはノンアジュバンドで、安全で抗体価の上昇も群を抜いて良好だそうです。(村田先生談)

 ※かかりつけの動物病院で取扱いがあるかはご確認ください。

 

 

そして、同じペットのお世話に携わる皆様

レプトスピラ症に限らず、たくさんの感染症があります。

私たちペットシッターを信頼して預けてくださっている大切なワンちゃん、猫ちゃんに媒介したり感染させてはいけません。

その為には、私たちがまず自分の身を守り、もらわないことが大切です。

 ※入室時の手洗い・退出時の手洗いはもちろんですが、食器やおトイレのお世話時、ゴム手袋をつけましょう。

  (市販されている使い捨てのものでも予防できるそうです)

  村田先生によると、指の傷やささくれ、乾燥した皮膚からも経皮的感染するそうです。

 ※噛まれた場合など、軽度だと自己判断せず病院に行きましょう。

 ※お世話時に着用した衣類や道具は動物用の消毒剤などにつけおきしてからのお洗濯をお勧めいたします。

  (少し高価ではありますが、診療施設の掃除などにも使用されるものがネットでも購入できます)

 

このセミナーを受講して、身近に潜む感染症の怖さを再認識したとともに、家族同然の大切なペットを預かっているという責任についても改めて強く感じました。村田先生ありがとうございました。

 

GURUGURU みなとみらいでは、カウンセリングでもお伝えさせて頂いておりますが、入室時はまず手を洗わせて頂き、その後にペットに触れさせて頂いております。食器の洗浄時、おトイレ、嘔吐の処理時も手袋を付けさせて頂き、帰宅後は着用していたものやリードなどの消毒も徹底していきます。

【もらわない・うつさない】を徹底してまいりますので、これからも引き続きよろしくお願いいたします。